事業譲渡
事業譲渡とは
「事業譲渡」とは、会社の株式を売買するのではなく、会社が運営する事業のうち、全部または一部分の事業そのものに関連する資産や負債のみを売買するM&Aの手法のことを「事業譲渡」と言います。
M&Aの手法としては株式譲渡と並びポピュラーな手法です。具体的には、店舗や工場などの有形固定資産や売掛金や棚卸在庫などの流動資産だけでなく、営業権や人材、ノウハウといった無形資産も売却の対象となります。
売却を希望する企業にとって、会社全部は譲渡したくはないが、切り離したい事業がある時には有効な手段と言えます。
わかりやすい例で言えば、小売店舗や飲食店舗を他店舗展開している運営会社が1店舗のみを売却するようなケースです。
売却を希望する企業にとっては、不採算部門の売却により、事業の再構築や経営のスリム化を行えるわけですし、売却して得た資金を別の注力すべき事業へ投入することが可能です。
買収を希望する企業にとっても、会社をそのまま継承するわけではなく、必要な事業に関連する資産や負債のみを譲り受けるため、簿外債務などが発覚しても負担する必要はありません。
その意味においては簿外債務のリスクを避けたい買い手にとっては安心な方法と言えます。
また、営業権や引き継いだ資産を償却できるので節税対策としても効果が期待できます。
上記のとおり、売却を希望する企業にとっても、買収を希望する企業にとっても、それぞれメリットはありますが、事業に関連する資産はどこまでの範囲なのかを区別しなければいけません。
このため、各取引先との契約を引き継いだり、人材についても誰を引き継ぐのかなど、売却の対象を明確に区別する必要があり、手続き面での煩雑が残ります。
また、移転する資産のうち、不動産であれば移転登記、特許権であれば移転登録等、個別の権利の移転の手続が必要です。
売り手側のデメリットとして、会社法21条により売手側は売却した事業について20年間は同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内で売却をした事業と同一の事業を行うことができなくなります。
一方、買手側のリスクとして、手続きに手間がかかるばかりか、取引の相手方や従業員の同意が得られるとは言い切れませんので、重要な取引先との取引を失うとか、事業遂行上重要な従業員が退職してしまうというリスクがあります。